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理事長ごあいさつ

新生児マススクリーニング追加検査対象疾患・地域の拡大と岐阜県における助成支援

 我が国における新生児マススクリーニング事業は1977年に開始され、多くの子どもたちを障がいから救ってきました。さらに2014年からはタンデムマスによる新生児マススクリーニングが開始され全ての新生児を対象に公的事業として20疾患のスクリーニング検査が無償で実施されています。その中で難病に対する治療開発は急速な勢いで進歩しており、いくつかの難病では早期診断・治療により予後が確実に改善され、疾患克服に繋がることが期待されています。そのため海外や国内でも都道府県単位でこれら早期診断により予後改善が期待されるいくつかの疾患に対して、保護者の同意のもと実際に新生児スクリーニング検査が開始されています。
 岐阜県でも東海マススクリーニング推進協会が主体となり岐阜県公衆衛生検査センター、岐阜大学小児科及び地域の中核病院小児科の協力を得て、対象疾患を追加した有償のスクリーニングが「地域モデル」として令和3年4月より開始されました。
 本モデルの特徴は東海マススクリーニング推進協会、岐阜県公衆衛生検査センター、県内産婦人科・新生児医療機関が三者契約を締結して有償で行うスクリーニング検査を「事業」、スクリーニング陽性者の精密検査受診以降を岐阜大学医学研究等倫理審査委員会の承認を得て、保護者の同意のもとに行う「実装研究」と位置付けています。
 スクリーニングで陽性と判定された全てのお子さんは岐阜大学小児科を受診され、それぞれの疾患の専門医が精密な診断を行い、患者と診断された際には適切な治療・支援・フォローアップを提供しています。その際に健康で生まれたお子さんに対して難病の診断、治療を進めることになるため、あくまでお子さんや保護者に寄り添う優しい医療の提供を心がけています。その上で同意を頂いた際には実装研究として得られた成果を匿名化して厚労省やこども家庭庁の政策研究班や学会、患者会等で議論し、科学的根拠に基づくスクリーニング検査の継続、発展を目指しています。
 当初は原発性免疫不全症、ポンペ病、ファブリー病、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症の7つを対象疾患としてスタートしましたが、令和5年度よりゴーシェ病、ADA欠損症を追加しています。また対象地域も令和4年度より石川県、令和5年2月より三重県、4月より福井県に拡大しています。
 現在、各県の医療機関の関係者や保護者の方のご理解を得て、全出生児の80%前後のお子さんに受検して頂いています。今後、1人でも多くの難病患者の予後改善につなげるとともに、本事業の成果と課題を検証して多くのお子さんが受検していただけるように検討して参りたいと存じます。
 その中で岐阜県においては2023年11月1日から新生児マススクリーニング追加検査が出産・子育て応援ギフト(ぎふっこギフト)を利用して受検することが可能になる予定です。ぜひ県内多くのお子さんでご利用を検討いただくとともに、この岐阜県における公的助成モデルが他県のご参考になれば幸いに存じます。
 引き続き、皆様のご支援ご指導をよろしくお願い致します。

2023年10月吉日

東海マススクリーニング推進協会 理事長
岐阜大学 高等研究院 特任教授/名誉教授
同 附属病院小児科/検査部難病検査部門
下 澤 伸 行

一般社団法人 東海マススクリーニング推進協会